新宿歌舞伎町と石川栄耀氏
コロナ禍前の歌舞伎町、中央奥のゴジラが新宿東宝ビル（中央）
日本を代表する歓楽街、東京・新宿の「歌舞伎町」という名前は、
栄耀氏のアイデアから生まれました。
戦後、新宿を再生しようと奔走していた町会長、鈴木喜兵衛氏から相談を受け、
大きな広場を中心に設け、映画館などの娯楽施設で囲むまちづくりを提案します。
この時の土地区画整理事業が、街の隆盛の基盤となっています。
その中に、新歌舞伎座を誘致する計画があったため、現在の町名になりましたが、
建築資材統制などにより実現には至らず、歌舞伎座の予定地には新宿コマ劇場が
建設されました。
「広場のある芸能中心としてつくった。日本唯一の広場のように思っている」。
栄耀氏は、歌舞伎町の広場（歌舞伎町シネシティ広場）について、こう記しています。
特徴的なのは、入り口から広場までジグザグに至るところ。
戦前は碁盤の目のように道が直角に連なっていたそうですが、
「中心まで真っすぐにつながる盛り場は栄えない」というのが栄耀氏の考えでした。
見通せないことが、好奇心をくすぐり、魅力につながるということなのでしょう。
機能性・利便性だけでは、街の深みは生まれないですから。
２０１６年６月に開いた１００回記念イベントでは、
歌舞伎町商店街振興組合の杉山元茂様に、お話をお伺いしました。
歌舞伎町で生まれ育った杉山様によると、昭和３０年代ころまでは、
ごく普通の街並みだったそうです。
健全な繁華街を目指して映画館や劇場、スケートリンクなどが集まり、
家族連れで賑わう街になりました。
その後、歓楽街として発展していきましたが課題も生まれます。
地域の方々や行政らが連携し、「健全な大衆の娯楽街」へと街づくりが進んでいます。
街の変化という意味では、２００８年に新宿コマ劇場が、２０１４年末に
新宿ＴＯＫＹＵ ＭＩＬＡＮＯ（新宿ミラノ座）が閉館し、大型再開発が始動。
コマ劇跡地で２０１５年に「新宿東宝ビル」がオープンし、ホテルなども次々と開業し、
コロナ禍前は多くの外国人観光客も詰めかけていました。
解体前の新宿コマ劇場アフターコロナを見通すタイミングとなってきた中で、
２０２３年４月にはミラノ座跡地に、「東急歌舞伎町タワー」が開業する予定です。
建設中の東急歌舞伎町タワー
歌舞伎町というと、皆さんはどんなイメージが浮かびますか？
歓楽街、ディープな飲み屋、キャバクラ、ホストクラブ、風俗、外国人観光客……、
人によってそれぞれなのでしょう。
私にとっては新宿＝音楽の街で、歌舞伎町で一番楽しんだのはライブハウスでした。
新宿リキッドルーム（現在は恵比寿）や、西新宿から歌舞伎町に移った新宿ロフトは、
何度も通いました。ライブが終わって外に出ると、夜の街も盛り上がっていましたね。
そんな光景が思い出されます。
写真はかつての夜の歌舞伎町
東急歌舞伎町タワーには、映画館やホテルのほか、新宿エリア最大級のライブホールも
入るそうです。新しいエンタメの拠点として注目が集まりそうですね。
栄耀氏は、余暇こそが人生の要だと考え、「夜の都市計画」の重要性を訴えていました。
多様な人たちが、それぞれが求める多彩な楽しみを享受できるような、懐の深い街が、
これからは、より重要になってくるように思います。
新時代の歌舞伎町がどう変わっていくのか。進化を期待しながら、楽しませて
いただきます。
コロナが収まったら、えいよう会リアルイベントでお邪魔します！ （２０２２年５月）